【其ノ六】「旧世界」の扉

 山口で暮らし始めて、はや5年…。わたしにも山口の「友達」ができました。

 

 もちろん、自分からこの人おもしろいなぁ、と声かけすることもありますが、向こうの方から「同じ匂いがする」ということでお声がけいただくこともあります。田舎生活ですので、だいたいどこかでお目にかかる機会があり、通勤中の田んぼのあぜ道、子どもの遊び場、雪山などなどでお目にかかったりします。その際に、「ちょっと今日どうですか?」ということで食事をしたりします。

 

 

 つい先日も、十種ヶ峰の雪山で友達で農家のYさんに会い、「熊肉が手に入ったので、一緒にどうでしょう?」ということで、パーティを開きました。パーティの名前は「旧世界」。不定期で年に1度か2度ほど開かれる感じでしょうか。パーティには知り合いのイノシシ狩をしているOさんもおられました。日が暮れる頃、「旧世界」は始まります。

 

 

 飲んでいて盛り上がったのは、キューバ革命(笑)の話と音楽と映画の話。音楽に関しては、「純正律」と「平均律」の話が、個人的に盛り上がりました。皆さん驚くほど博学で、身体知を絡めてさまざまなことをお話しされるので圧倒されます。毎日、身体を通してさまざまなことを獲得している人の言葉は重いですね。宮本常一氏や安渓遊地先生じゃないですが、山口にいると民俗の力強さに圧倒されます。

 

 

 興が乗ってきたので、持参したバイオリン、ギターなどでセッションを試みてみました。ウッドベースもあったかなぁ、あった気がします。バンドはやっぱりスリー・ピースがカッコいいという話にもなりました。何がカッコいいって、最小限なのです。日本だと、YMO、ブランキ―・ジェット・シティ、ゆらゆら帝国、キングブラザーズ…などなどがスリー・ピースです。

 

 

 ただ、残念ながら今回の即興はうまくいかず…。音楽的な背景がまったく違うということで、改めて折り合いをつけて調整し、何が一緒にできるかを考えてみることになりました。そこで浮上したのが、ラテンアメリカ系、アイリッシュ系のストリングス・バンド。アメリカのアパラチア山脈あたりで開催される、「clifftop festival」のようなものができたらいいなと思っております。

 

 誰か特別な聴衆に聴かせるわけでもなく、お客がいるわけではなく、自分たちで演奏を楽しみ、雑音のなかで、生音が届く範囲で音を奏でる音楽が至高だということは意見が一致しました。スポーツも音楽も勉学も、とにかく自分の身体を通してやってみるという姿勢が本当に素晴らしいと感じます。本当にカッコいいおじさんたちです。

 

 次にいつ「旧世界」の扉が開くかはわかりませんが、それに備えておこうと思っております。

 

 そんな日々是好日です。