わたしが日々使っているモノは、熟考を重ねたうえで手に入れることが多いです。モノによっては数年くらい考え続けてから買ったり、買わなかったりします。そんな話を人にすると、驚かれたりもするのですが、どうやらモノに対する思い入れが強いのかもしれません。ここではそんな語りたくなる愛用品をお話しします。
ここでお話しするモノたちは、だいたい長年にわたって使っているモノが多いのですが、今回のモノはまだ3年目です。2020年の10月に購入したので、まだ2年半ほどしかたっておりません。ただ、タイミング的に触れたいモノですので今回取り上げることといたしました。それはジャックデュランというブランドの眼鏡です。
正確には、Jacques Durand 506-013 Paques になります。なぜ今とりあげたいかというと、この眼鏡、先日亡くなられた坂本龍一さんの愛用品と同じ型だからです。もちろん、わたしも坂本龍一さんに合わせるべくこの眼鏡を選びました。彼の音楽、というか音作りがとても好きだったからです。
同じ型(506)でも、彼のはベッコウ生地、わたしがかけているのはササ生地という違いはありますが、基本的に、リスペクトというか憧れとしてこの眼鏡を選びました。少し値段は張るのですが、毎日かけるものだからいいかなと思って、こちらにしました。スニーカーもニューバランスを履く機会が多いのですが、間接的に坂本龍一さんの影響を受けているのかもしれません。
カジュアルでもオフィシャルでも、どんなシーンでも合わせることができる506はとても気に入っております。そしてセルフレームなのに大人っぽいところもよいと思っております。購入から2年たちますが、本当にカッコいいです。ただもちろん、坂本龍一さんには到底及びませんが…。これをかけていると彼に少しでも心理的に近づけるというか、親近感をもって感じ、考えることができるということで愛用してきました。
坂本龍一さんの音楽(音楽史)のことを話すと長くなってしまうので、ここでは眼鏡だけにとどめておきたいと思ってます。因みにわたしが最近、一番聴いていたのは、戦場のメリークリスマスでも、YMOでもなく、「async」というアルバムでした。音楽というか音作りというか、世界づくりというか…とてもよいです。
async(非同期)。音楽というと、和音やテンポで調和的な音の複合体を創り上げるイメージがあるかと思いますが、この作品において坂本龍一さんが「挑戦」したのは、非同期的な音楽。決して重ならない、合わない、乱れていく、しかしそれが音楽として作品になる(という部分だとわたしは思っており)、それが素晴らしいです。ですので、このCDを聴きながら入る外の雑音、街の雑踏もまた、音楽として調和し、開かれていくのです。このCDを聴くときは、車の窓を開けて風の音とロードノイズと、街の喧騒を併せて聴くのがよいと(個人的に)思ってます。
坂本龍一さんは亡くなってしまいましたが、同じ型の眼鏡をかけ、音楽を聴き、これからも彼の作品を堪能したいと思っております。亡くなってしまったのは悲しいですが、決して彼の作品が消えたり、聴けなくなってしまったわけではないですからね。
わたしにとって日々の暮らしを支えてくれている愛用品のひとつです。