先月も、いろいろと慌ただしくしておりました。
自治会の一斉清掃活動を(自治会長として)行ったり…
第六十九回中国四国地区中国学会の司会を行ったり…
救急救命講習に(自治会長として)参加したり…
地元のテレビ局(テレビ山口 tys)の取材を受けたり…
日本文化人類学会@北海道大学に参加したり…
学生を連れて民俗調査実習(今年は周南市)を行ったり…
おいしい干物の技術と味を絶やさないために萩市を訪問したり…
…とまぁこんな感じでした。
6月に読んだりしていたのはこんな感じです。
- 会田雄次「強制労働の日々」『アーロン収容所 西欧ヒューマニズムの限界』中公新書. 「イギリス人」というものに異様な執念を感じる。イギリス人を一括りにすることはできないとは知っていただろうに、そう思わざるを得ない環境というものがあったのであろう。「この地上から消してしま」いたい程に。
- 加藤康男「第5章 満洲国皇帝の光と影」『ラストエンペラーの私生活』幻冬舎(2019)。本章は溥儀よりも、弟の溥傑のストーリーが気になってくる。長女の心中、そして次女である福永嫮生さんはまだご存命なのか…。確かにこれを読む限りは溥傑と浩は政略結婚というよりも「恋愛結婚」のような気がする。
- 近藤祉秋 「第1章 マルチスピーシーズ民族誌へようこそ」『犬に話しかけてはいけない』慶応義塾大学出版会(2022)「はじめに」の野帳の記録はおもしろいし研究史の整理もとても美しい。「環境人文学」という単語を初めて知る。「傷ついた惑星」は誰にとって傷ついているのか気になるところではある。
- 藤川美代子「第12章 自然とつきあう――自然災害をめぐる科学知と生活知」『日本で学ぶ文化人類学』昭和堂(2021)文化人類学の教科書に「自然」が登場するのが21世紀的。ただ、ここではマルチスピーシーズや多自然主義とは違う自然。自然災害のくだりでアザンデの話と、長島の災因論がでてきて楽しい。
- 会田雄次「泥棒の世界」『アーロン収容所 西欧ヒューマニズムの限界』中公新書. 「イギリス兵は狂ったように(中略)、鞭で荷物をなぐりつける。身体をなぐらないのはさすがである」と。英国紳士には程遠い「コンドル」や少佐の話を見るにつけ、かつて相部屋だったバーミンガム出身のトムを思い出す。
- 加藤康男「第6章 后妃たちの終戦」『ラストエンペラーの私生活』幻冬舎(2019)。溥儀の世代には名前に「溥」という文字が使われることが多く、次世代の従兄弟や又従兄弟になると「毓」がよく付けられた(p.283)と。完全に輩字ですな。奕→載→溥→毓…いろいろ調べたら溥傑の墓は下関とか。行かねば…
- 加藤康男「第7章 それぞれの断崖」『ラストエンペラーの私生活』幻冬舎(2019)。ソ連に捕まったとたんに、社会主義を賛美し、スターリンに永住希望の書翰を送る溥儀の「スネ夫」感。生存戦略とはいえ、ここまでくると潔い。ある意味優秀な専業皇帝。それに比して残された妻や従者たちの悲惨さが顕著。
- 多々納弘光「4章 共同体を支えた信仰心」『出西窯と民藝の師たち』青幻舎 (2023) いろいろと考えさせられることが多い本章。リーチ先生もいいのだが、個人的に響いたのは山本空外上人のお言葉。「問題は背姿です」というのは重い。アカデミアと仏道を両立しつつ、山口大学にも集中講義に来ていたとか。
- 作:浜田廣介作、絵:池田龍雄『ないたあかおに』偕成社(1965)本作はたくさんの画家による別バージョンがあるが、個人的に池田龍雄のものが最高峰だと感じている。日本語のアオという民俗的色彩表現のグリーンからブルーにかけてを効果的に用いて心情を見事に描き出している。時にそれは対比的に。
- 上橋菜穂子「第二章 動きだした闇」『闇の守り人』偕成社. 某人類学者からいただいた本を3人の子どもに寝る前に読み聞かせる(時が来た)。新ヨゴ王国に比してカンバルはテクストの依存しない社会な気がする。そういった社会の場合、何が語られるかと同様、誰が語るかが重要なのであろう。名誉は必至。
- ガタロー☆マン『おおきなかぶ~』誠文堂新光社 (2021)圧倒的画力(えぢから)とはこのことぞ。1度見たら忘れることはできない。漫☆画太郎先生、否、ガタロー☆マン先生。『ももたろう』に続く本作。もはや何も起きていない山小屋が、逆に面白く見えてくるから不思議。天才的な画力。おしまい!!!
- 上橋菜穂子「第三章 〈山の王〉の民『闇の守り人』偕成社. 某人類学者からいただいた本を3人の子どもに寝る前に読み聞かせる(時が来た)。ここで興味深いのは濃度によって異なるトガル(毒)の使い方。目に塗るくだりは、石井美保さんが精霊を見たときの、ヒョウタンに入った霊水の話を思い出した。
- 上橋菜穂子「第四章〈ルイシャ贈りの儀式〉」『闇の守り人』偕成社. 某人類学者からいただいた本を3人の子どもに寝る前に読み聞かせる(時が来た)。ついにクライマックスである「式年祭」。文化進化論ではないが、祭りの根本を感じる。それにしてもカンバルは父、兄、(父方)オジと父系観念が強い。
- 横山光輝『三国志』4 潮出版社。この「乱世の奸雄」といえば曹操というほどに、適切すぎるネーミング。超合理的で日本でいう信長的存在といえよう。河南省陳留群の背景が何度か登場するのだが、こんなに山々に囲まれていたっけ?とも思う。あの辺りはだだっ広い平原が続いてる印象。「歴史」の中心地。
- tupera tupera(作・絵)『しつもんブック100』(2019) tupera tupera の魅力は、画のクラフト感。紙なんだけど、どこか立体感や手触りを感じてしまう。この本は子どもとの冗長な会話に最適。「いままでで いちばん すごい うんこって どんなの?」て、そりゃ隣の画の初恋の話を訊いてくる彼ですよ(笑)
- 上橋菜穂子「第一章〈花〉の夢」『夢の守り人』偕成社. 某人類学者からいただいた本を3人の子どもに寝る前に読み聞かせる(時が来た)。ここの〈生命〉と〈魂〉をめぐるくだりは、EP の『ヌアー族の宗教』における、肉体:リン、生命:イーエグ、魂:ティエを想起。あるいはトロブリアンドのバロマ的。
- tupera tupera(作・絵)『パンダ銭湯』(2013)絵本館tupera tupera の魅力は、画のクラフト感。紙なんだけど、どこか立体感や手触りを感じてしまう。だが本作は手書きの背景が多い印象。お話も超面白いのだが、銭湯の唐破風スタイル、赤と青のカラン、関東風の浴室、ポスターなどなど見所たくさん。
- 学会へのフライト中にヨルゴス・ランティモスの映画『ロブスター』(2015)を視聴。西欧近代社会において、結婚・カップルになるも地獄。そして結婚・カップルにならないも地獄というのが、さまざまなメタファを通して描かれる。鼻血と失明は、共に生きることの「痛み」としてみたが、悲痛だなぁ…と。
- 田中達也『おすしが ふくを かいにきた』白泉社 (2022) おすし(他)の写真絵本。本当にそんな世界がありそうで素敵。シウマイたちのサウナは、そのあとのタレの小皿が「水風呂」に見えてしまうから不思議。世間のいわゆる「制服」を着ている人間たちも、実は「制服」が主役で人間は着せ替えなのかも。
- 人類学会の復路のフライト中に片山慎三『岬の兄妹』(2019)を視聴。ある港町で暮らす片足を引きずる兄と自閉症の妹の物語なのだが、最初から最後まで「まりこぉ~」が響く。その多くは悲痛な声で。世間からの蔑み、ケアという暴力を感じつつも、どこか救いがある2人。最後のシーンは浮遊してて見事。
- 昨日はご縁があって近所の子どもたちとYCAM Dance Crew 2024 「メディア・テクノロジーでダンスをパワーアップするワークショップ」を体験。身体を動かすことが視覚的に「動き」として表現されるというのは興味深い。ダンスがデジタルアートで視覚化されるだけでなく、視覚化を意識した身体表現も。
- 週末は「映画ドラえもん のび太の地球交響楽(シンフォニー)」を子ども3人を連れて、近所の市民会館で視聴。いろいろ突っ込みどころもありつつも、生活音を含めて音楽を語っているのがよい。電線が5本で鳥のとまり方が音符になっていたりと、細かな部分にも仕掛けあり。ただ西洋音楽よりですが…。