007:HASAMI ブロックマグ

 わたしが日々使っているモノは、熟考を重ねたうえで手に入れることが多いです。モノによっては数年くらい考え続けてから買ったり、買わなかったりします。そんな話を人にすると、驚かれたりもするのですが、どうやらモノに対する思い入れが強いのかもしれません。ここではそんな語りたくなる愛用品をお話しします。

 

 ここ10年程でしょうか、ずっと使っているマグカップがあります。それは波佐見焼のブランド、HASAMIのブロックマグです。このブロックマグに関しては語ると長いのですが、本当に作り手である職人さんがおかれた状況であるとか、最後は自分が好きなものをつくる!という気持ちであるとか、そういうものに共鳴して、是非使いたい!と思って買い始めたのが最初です。

 

 

 とにかく、もっとも基本的な形は、ブロックマグ(SEASON 01)。すべての歴史はここから始まります。語ると止まらなくなるので、気になる方は馬場匡平さんで、いろいろとネットを検索されるとよいかと思います。これまで有田焼の下請けとして続いてきた波佐見焼、倒産の危機、「用の美」としての波佐見焼。そんなストーリーが垣間見られます。

 

 

 もちろん、使い勝手も抜群で重ねることもでき、無骨ですが口当たりもよく、まさに「用の美」を感じます。あと色合いも美しく、コーヒーが黒くて単調なだけに、コーヒーとの相性は抜群です。お茶よりはコーヒーですね、間違いなく。

 

 

 初期のころは、裏側まで塗料があり、HASAMIのマークはシールで張られておりましたが、時代が下るにつれて、シールではなく、焼き印のようなものになっていきました。これも長らく愛用しているからこそ感じる変化。少しずつ基本を残しつつもマイナーチェンジしている様子が窺えます。

 

 

 こちらはアメリカの House Industries とのコラボ企画のマグカップ。「用の美」を維持しつつ、遊ぶところは遊んでいて、本当に日常生活を豊かにしてくれます。

 

 

 このマグカップは、一番上の子どもがまだ小さいときに、長崎県の波佐見にある工房のお店に、直接買い付けに行ったとき買ったものです。ここ数年は行けておりませんが、昨今はコロナもおさまってきたので、また波佐見に食器を買いに行けたらいいなぁ、と思ってます。贅沢な時間。

 マルヒロのお店も、焼き物の「屍」の上に商品が並べられていて、非常に考えさせられるデザインになっております。われわれが手にしている多くのモノの背後に、それの失敗作、焼き損じ、日の目を見ることのなかった数々のモノたちが存在していことに思いを馳せます。

 

 

 日常の道具なので、HASAMIのマグカップは、そんなに高価なものではありません。特段、超高度な技術を要しているわけでもないと思いますし、大量生産に耐えうる品だと思います。ただだからこそ、そこに「用の美」を感じてしまうわけで、本当に日常の中に溶け込んで、わたしたちの生活を彩り豊かなものにしてくれる作品だと思っております。

 

 わたしにとって日々の暮らしを支えてくれている愛用品のひとつです。